あがり症とたたかう演奏家Ichiyoのブログ

あがり症とうまく付き合えるようになるためにやっているトレーニング方法や学んだ理論などを紹介します。私はあがり症研究の専門家ではありません。

落ち着かない出番直前の戦略・30分前スケジューリング

今日は少し違ったアプローチのあがり症対策をご紹介します。

 

その名も【30分前スケジューリング】と言います。

 

出番から逆算して30分前から出番までの行動を決めておき、それに従って行動するというものです。

 

出番直前って、何をしたら良いかわからないですよね。

 

演奏家あるあるかもしれないですが、私は不安になって何度も何度も発声の確認をしたくなってしまいます。

 

一回歌ってみて、あーここがダメだったな、後ここも不安だな、出だしの確認もう一回しとこう…と、際出番直前に限無く確認したくなってしまうのです。

一回終わりにしたとしても、トイレから帰ってきたら、まだ時間がある…よしもう一回声出ししとこう、みたいな感じです(笑)

 

よく考えたらあまり意味のないことです。当日までに練習は十分にしているはずですから。

 

そういう私みたいな人には、出番前にやることを前もって決めておくことはとても有効です。

 

一例として、私のある本番前のスケジュールをお見せします。

 

出番 13:00

12:30 迷走神経の体操

12:33 太陽の瞑想

12:43 出てから歌い終わるまでの、本番の視覚化

12:50 迷走神経の体操

12:53 トイレ&トイレ個室内でガッツポーズなど、自分を落ち着かせるための自己暗示をする

12:59  舞台裏

 

発声は30分前までに済ませておき、それ以降は本番まで一切歌わないのが私の最近の習慣になっています。

 

まだブログでご紹介していない練習などもあるのでなんじゃこりゃと思われる項目もあるかもしれないのですが、それは追々ご紹介します。補足をすると、私は本番前の時間を基本的にはメンタル面の手助けをするために100%使っています。

もちろん人によってはここに発声の時間が入っても良いと思います。大事なのは、自分が一番落ち着ける方法を模索し見つけることです。

 

今までブログでご紹介したものからだと、呼吸、視覚化、例えばこの二つを交互にプランする、というシンプルなものでかまわないです。

 

ポイントは、本番前の心理状態を想像して事前に分刻みのスケジュールを書いておくことと、それを出番前にきちんと守って行動することです。

 

これはいつもご紹介しているようなトレーニングと組み合わせて使うと良い戦略です。

 

 質問がある方はコメントやメッセージなどでぜひお知らせくださいね。

 

いつも見ていただきありがとうございます。

良い1週間のスタートを!

 

 

あがり症対策のトレーニング・視覚化(ヴィジュアリゼーション)

前回はあがり症対策へのはじめの一歩として呼吸に関するトレーニングを紹介しました。

 

今日は瞑想の一環である視覚化のトレーニング(英・Visualization)をご紹介します。

 

目的に応じて様々なやり方があると思いますが、今回紹介するトレーニングの目的は、呼吸のトレーニングと同じく、アドレナリンのせいで昂りすぎた心身を落ち着けることです。

 

それでは、始めます。

 

………

 

まず、楽な体勢をとってください。目を閉じるので、始めは座っていた方がやりやすいと思います。

 

目を閉じます。

 

次に、自分がとてもリラックスできる好きな場所を思い浮かべてください。

 

そこはどんな場所ですか?

 

どんな匂いがしますか?

 

どんな音がしますか?

 

例えば風がそよそよ吹いていて、それが皮膚に当たる感覚がしますか?

 

陽の光は目蓋の裏まで感じられますか?

 

………

 

その場所でくつろいでみてください。

 

そこで気持ちの良い時間を過ごせることを、楽しんでみましょう。

 

数回深呼吸します。

 

………

 

今、身体や心境の変化はありますか?

 

やる前と後でどう変わりましたか?

 

まだ目を閉じたまま、よく感じてみましょう。

 

………

 

変化をはっきりと認知することができたら、自分のタイミングでゆっくりと目を開けます。

 

いかがでしたか?

 

呼吸とは少し別の角度からのアプローチになりますが、これも自分を落ち着けるために有効なテクニックです。

 

大事なのは、本当に心からリラックスできる、できれば実際に行ったことのある場所を選ぶことと、これ以上できない、というくらい細かく、匂いや音や感触なども想像することです。

 

私はいつも、天気の良い日のある湖のほとりでくつろいでいるのを想像しています。

 

毎日これを練習していると、そのうちに脳のシナプスが繋がってきて、これをやると身体がすぐにリラックスできるようになる、という仕組みです。

 

脳の仕組みについては詳しくないのですが、新しいシナプスができて安定するようになるまでは年単位で時間がかかると聞いたことがあります。それまでは、何も努力をしなければ簡単に古い方の習慣に行ってしまうことになります。

 

毎日数分間トレーニングを続けるのと同時に、本番時に限らず、不安だな、今落ち着かないな、と感じた時にこれを積極的に試していく必要があります。そこで、「このトレーニングをやって落ち着きを取り戻すことができた」と、脳に覚えさせていくのです。

 

時間もかかるし途方もない作業のように聞こえるかもしれませんが、継続してコツコツ積み上げていくことこそが最大の近道であると思います。私も余裕のない日はサボってしまったりもしますが、明日またやれば良いやと気楽に考えます。もちろん毎日欠かさずストイックにできれば一番良いですが、それができない私みたいな人は、自分を追い込みすぎないで、でも長い目で見て継続的に練習していきましょう。何年も続けていくために、無理なく自分に一番合ったやり方を見つけていきましょう。

 

これからも実践的で有益な情報をブログに書いていきたいと思います。

その中からひとつでも二つでも、読者の方が自分に合うトレーニングを見つけることができると嬉しいです。

 

 

あがり症対策のトレーニング・呼吸の練習をしよう

今回からトレーニングを紹介していきます。

 

様々なトレーニングがあるなかでまず紹介したいと思ったのが、呼吸のトレーニンです。

呼吸と体調は密接な関係なので、呼吸を練習しただけで本番前の気持ちや身体の状態がだいぶ落ち着くという人もいると思います。

 

心の状態と身体の状態は常にリンクしています。身体の調子が悪ければ心にネガティブな影響を及ぼし、逆に心の状態が悪ければ体にも不調となって出てきます。

 

本番前の非常にナーバスなときには、心と身体が悪い方に影響しあって、取り返しのつかないことになってしまいやすいです。

 

身体と心の悪循環に陥りそうになったら、それを認知して、自分で断ち切ることが重要です。出番直前に、自分を助けられるのは自分しかいませんよね!その時のために普段から練習しておきましょう。

 

以下に三種類の呼吸トレを載せますが、試してみて自分にあったものを選んで、2週間以上続けてみてください。きっとあがり症対策の入り口として役立つと思います。

 

呼吸のトレーニング①・四角の呼吸

4秒間息を吸う→4秒間何もしない(吸ったり吐いたりしない)→4秒間息を吐く→4秒間何もしない(繰り返す)

 

呼吸のトレーニング②・三拍子の呼吸

三角形ひとつで1小節、4小節で1クールです。

手や指で三角形を描きながら、1小節目:息を吸う、2小節目:息を吐く、3小節目:息を吐く、4小節目:何もしない(繰り返す)

 

呼吸のトレーニング③・2秒4秒の呼吸

息を2秒間吸う→4秒間吐く(繰り返す)

 

2秒4秒が早すぎると感じたら、時間を伸ばしても良いです。ただし、吐く時間が吸う時間の倍になるようにしてください。3秒間吸ったら6秒間吐く、という感じです。

 

以上三種類のトレーニングの中からひとつを一回5分、一日2回以上を2週間ほど続けてみてください。大事なのは、トレーニング後に必ず前と後で何がどう変わったのか、明確に意識することです。例えば「やる前と比べて胸が開いた感じがして呼吸がしやすくなった」などです。声に出すか、紙に書くのがおすすめです。

 

どれを選べば良いかわからない、という人は、まず三つとも試してみて、やる前よりリラックスできた、と感じるものを選んでください。

 

ちなみに私は、息を吸ってもはいてもいけない時間というのが苦痛で、①と②は合わないようでした。

 

この中のひとつで自分の気持ちが落ち着いたり、リラックスすることができるものが見つかったら、毎日の練習前やレッスン前、本番の時に使ってみましょう。

本番だと、私は出番30分前のスケジュールを決めており、その中で5分間の呼吸タイムを一回か二回入れています。出番前のスケジューリングについてもそのうち投稿したいと思います。

 

とはいえ練習前と本番前の心体の状態は全然違いますから、より本番に近い身体の状態にするために、ちょっとその辺を全力で走って、息が少し上がった状態で呼吸のトレーニングをしてみるのも良いと思います。この方法は人から聞いたのですが、斬新だけど良いアイディアだなと思います。

 

それでは、呼吸のトレーニング頑張ってください!次回は別のトレーニングを紹介していきます。

 

Fight or Flight・あがり症とアドレナリンの関係

あがり症の症状の中で私が一番恐れているものは…

 

前回の投稿に書きましたが、血の気がひき、手、腕や足からじわじわと痺れていく感覚に加え、頭も痺れてくる感覚です。

 

過去に一度気絶して倒れた事があるのですが(これはあがり症や本番のときではないです)、気絶する直前の感覚にとても似ています。

頭がクラっとして、視界も端から黒くなる感じ。

これが、私の場合は本番直前や、舞台にでて歌い始めてから突然出てくる事があります。

 

人間は身の危険を感じたときにアドレナリンを大放出させて、身体のパフォーマンスをぐんと引き上げるという機能が備わっています。

 

これは人間が文化的な生活をおくる以前から、つまり、自然により近い生活をしていた頃から備わっている動物的な機能で、アドレナリンを出す事によって、その危険との戦いのパフォーマンスを上げたり、素早く逃げられたりするように、通常時とは違う身体の状態にするという目的があります。

 

今日のタイトルにも入れた、Fight or Flight(闘うか、逃げるか)とはまさにこの状態のことになります。

 

だから、アドレナリンが出て身体が臨戦状態になるというのは基本的には良いことなのです。

 

しかし、ある以上の量のアドレナリンが出てしまうと、身体は別の反応を示し出します。

多ければ多いほど良い、というわけではないのです。

 

私のアドバイザーの一人から聞いたのですが、身体が危険を察知してアドレナリンが出すぎてしまい、このとき身体中の血液を心臓に集中させる、というアクションが起こっているようです。

 

ですから、私の「身体の末端や頭からじわじわ痺れていく」「血の気がひく」という感覚は、まさにその通りのことが身体の中では起こっていたと言えます。

 

よく映画などの中で「あまりの恐怖に気を失ってしまう」という表現がありますが、これは同じくアドレナリンのオーバードーズ状態の結果なんだろうなと思っています。

 

では、アドレナリンを多すぎず、適量放出するためにはどうすれば良いか?

 

まずは、身体と心がリラックスする方法を学ぶことです。

 

言うは易し。本番時にリラックスなんて簡単にはできないということは、演奏家のみなさんが一番分かっていらっしゃることだと思います。私も大変苦労しています。

 

ちなみに、ここで言うリラックスとは、家でだらだらしている時のようなものではないことをお断りしておきます。前述の通り、アドレナリンの過剰分泌を防ぐ、と言う意味でのリラックスです。

例えばアドレナリンが出過ぎてしまう人の本番時の分泌量が70%、家でだらだらしている時が0%だとしたら、パフォーマンス力は上げつつ、あがり症による支障が出ない30%くらいまで落としましょう、というイメージです。

 

アドレナリンの放出は、人間が危険を察知したときに起こるわけですから、その認知する危険の度合いをなるべく小さいものにしてあげれば良いということです。

 

”危険”とは、太古の昔では”自分が怪我を負ったり、死んだりするかもしれない状況”だったわけですが、現代ではそんな状況になることはまずありません。ましてや演奏会のときに命の危険が迫ることなんてそうそうないことです。

 

なのになぜ自分が演奏するときに”危険”を察知しFight or flightの状態になってしまうのでしょうか。

 

何を持って”危険”としているか理由は人それぞれですが、私の場合は、自分が聴衆の批判に晒されることをとても驚異に思ってしまっているようです。あがり症を持っている人は、まずは、なぜ自分がステージでパフォーマンスすることを危険と認定しているのか、その理由をじっくりと紐解く必要があります。

 

理由がはっきりしたら、またはある程度分かってきたら、トレーニングを初めてみましょう。

 

…とそう一口に言っても、ものすごくたくさんの観点や選択肢があります。また、一人一人適切なトレーニング内容は違うので、たくさんの選択肢の中から自分に合いそうなものを選んで、またはかたっぱしから試していく必要があります。

 

実際、これは時間がかかるし、やっていくうちにこれ合わないな…となればそれをやめてまた別のものに取り掛かる、ということの繰り返しになるので一見無駄に見えるようなことが多く、非常に根気のいる作業になります。トライアンドエラーでございます。

 

それでもあがり症をなんとかしたい!というみなさん、一緒に頑張りましょう。

 

それでは次回の投稿で、呼吸のトレーニング方法を紹介したいと思います。

 

トラウマ体験談とあがり症の症状

今日は自分のあがり症について書いてみようと思います。

 

私があがり症を初めて経験したのは、10年ほど前になります。歌い始めた自分の声は、短くない待ち時間と緊張から少し痰が絡んでいました。そのことに驚いてしまい、始めの数小節を歌っている間、腕から血の気が引き痺れ、気絶しそうな感覚に襲われました。同時に「これ以上歌えない。今すぐ歌うのをやめて舞台から降りたい」と思ったのを覚えています。しかしその衝動を必死に我慢して歌うのをやめずに、4分ほどの曲を最後まで歌い切りました。ちなみに本番前、本番中にあがり症が出てきた時は、今すぐここから逃げたいと必ず頭をよぎるのですが、幸か不幸か、今までドタキャンしたことも、演奏を途中でやめたこともありません。

 

振り返ると、これが最初のトラウマになってしまったあがり体験でした。その後もしばしばこの感覚に襲われ(毎回ではないけど)、その度に恐怖と戦い、本番が終わった後は疲労と絶望感が残ります。これを抱えたまま演奏家としてやっていけるのか?という未来に対する絶望感です。

 

私の本番時の体の症状は、以下のとおりです。

 

・口の中と声帯付近が渇く(いつも)

・喉が渇くせいで、声帯同士が張り付く感覚がする(あったりなかったり)

・痰が絡む(いつも)

・手足が震える(いつも)

・脂汗をかく(いつも)

・動悸(いつも)

 

これらの症状は、程度(強度)はさておきどんな本番時にも出ます

 

ちなみに、本番時のこういった症状は、その演奏家の楽器に関係するものが多いと聞いた事があります。例えばピアニストなら手や腕に関係する症状、声楽家や管楽器奏者なら、口の中の症状、というような感じです。私も手が震えたり手汗をかいたりもしますが、演奏に直接関係するところの不調や違和感の方を真っ先に感知してしまうのは、当然なのかもしれませんね。

 

さてここから、あがり症の症状を挙げてみます。

 

体の症状(上記の症状に加えて)

 

・腕や脚や頭から血の気がひき、じわじわと痺れていく感覚

・軽いめまい

 

心の症状(心の声)

 

・頭が真っ白になり、理性的に考えられなくなる

・もうできない、逃げたい

・出番直前(数分前)なら、今からドタキャンしたらどうなるか?と考え出す

・出番直前(数分前)なら、歌っているときに練習でできていた事が全くできなくなるんじゃないか?と考え出す

・やばいやばいやばいやばいやばい…(エンドレス)

 

演奏家のみなさま、いかがでしょうか、一部でも似たような経験があるのではないでしょうか😅私はこれをパニック状態と呼んでいます。

 

私のあがり症は前触れもなく突然訪れるので、10秒前まで落ち着いていたのに急にパニックになったりします。毎回必ず起こるわけではないし、いつどんな条件で発動するかはまだ観察中なのですが、起こるとすれば、伴奏者や聴衆のことをよく知らないときが多いです。例えば門下の試演会など、聴衆もよく知っている人たちの本番では起こりづらいけど、学外での演奏時、知らない人がたくさんいる時には起こりやすいです。また、本番の一時間前などかなり離れた時間帯に起こることはなく、自分の出番の10分〜数分前か、歌い始めてすぐのとき、私の場合はこの二つの時間帯に全て起こっています。

 

このパニックが起こるメカニズムと、症状とどのようにつきあっていくか、私のやっている対処法を、次回書いてみようと思います。

はじめに・ちょっと自己紹介

こんにちは。ブログへのご訪問ありがとうございます。Ichiyoと申します。

 

私は声楽家であり、現在スイスの大学院で声楽教育(Master Musikpädagogik Gesang)を専攻している学生です。聴きなれない専攻かと思いますが、声楽の先生になるために教授法を習ったりそのトレーニングをしたりする学問です。修了すればスイスの音楽学校で声楽を教える事ができる資格が得られます。

 

私は大学院入学後に、長年苦しんできたあがり症にきちんと向き合おうと思い(というか正確には、無視を決め込んだものが向き合わざるを得なくなり)、現在二人のアドバイザーと一緒にあがり症克服に取り組んでいます。

 

何度目かの面談のときに、一人のアドバイザーが私がトレーニングをとてもうまくやっていると言ってくれ、加えて、あがり症に対する私の取り組みが他の人たちも刺激する事ができるといいねという彼女の一言がきっかけで、まずはブログで公開してみようと考えました。私のブログが、あがり症についてより深く考えるきっかけや、コメント欄でディスカッションできるプラットフォームになれば良いなと思います。

 

演奏家はその70%が大なり小なりのあがり症に苦しんでいると言われています。決して少なくない数字ですが、私は日本の音大では正しいサポートが得られませんでした。

 

自分にあがり症があると気付いたら、病院のように、または心療内科のカウンセリングのように、ここに行けばいい、これに頼ればいい、という場所(物、人)がもしあったら心強いと思いませんか?私はそれを見つけるまでに大変な時間がかかってしまいましたし、苦労しました。 

 

自分のあがり症について誰かに話すことや、誰かに助けを求めることがもっとポピュラーになることを願ってこのブログを始めます。